続づいて五六人は乗ったろう。 目に涙が一杯たまっている。 清はおれをもって将来立身出世して立派なものになると思い込んでいた。 　停車場はすぐ知れた。 小使に負ぶさって帰って来た時、おやじが大きな眼をして二階ぐらいから飛び降りて腰を抜かす奴があるかと云ったから、この次は抜かさずに飛んで見せますと答えた。 その時分はどんな仕掛か知らぬから、石や棒ちぎれをぎゅうぎゅう井戸の中へ挿し込んで、水が出なくなったのを見届けて、うちへ帰って飯を食っていたら、古川が真赤になって怒鳴り込んで来た。 飯を済ましてからにしようと思っていたが、癪に障ったから、中途で五円札を一枚出して、あとでこれを帳場へ持って行けと云ったら、下女は変な顔をしていた。 親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。 　挨拶が一通り済んだら、校長が今日はもう引き取ってもいい、もっとも授業上の事は数学の主任と打ち合せをしておいて、明後日から課業を始めてくれと云った。 おれを見る度にこいつはどうせ碌なものにはならないと、おやじが云った。 　何だか二階の楷子段の下の暗い部屋へ案内した。 おれを見る度にこいつはどうせ碌なものにはならないと、おやじが云った。 元は身分のあるものでも教育のない婆さんだから仕方がない。 もっとも驚いたのはこの暑いのにフランネルの襯衣を着ている。